じゃぱん。お師匠様の元へ、ですの。

FURUTS べとなむ奇行最終回ですわ。

 そうしてニックの泊まっているホテルまでびゅーんとバイクタクシーで行ったですの。
 3人で街をぶらぶら歩いていたら、程なく町の中心の湖に出ましたの。湖のほとりには人がいっぱいいて、
周りには賑わってるふうのおっしゃれ~なレストランがありました。
 ニックが「ここに入ろう」というので「ええそうしましょう」と中に入ると生バンド?
が民族音楽の演奏をしていてそれはそれはステキなんでしたの。毎晩一杯40円のフォーばっかり食べてたので、
そこは竜宮城みたいなところに思えましたわ。
 みんな、まずはビールで乾杯したですの。汗をだらだらかきながら歩いていたのでビールがとってもおいしかったですの~。
その時点でわたくしはお酒が回りはじめて、る~るるる~。ニックが「ハニー。お料理はなにがいい?」と聞くので、わたくしもごきでんで
「おまかせしますわ。ダーリン」と答えたですの。弟君は「おう。あつあつだぜ。おいらは飯抜き?」と笑っておりました。
 ニックがあれこれとオーダーする間、わたくしはバンドの演奏に聴き入っておりましたの。
日本の琴に似た楽器があったりしてとってもなつかしい感じがしましたわ。
 そのうちお酒に弱いわたくはさらにビールが回ってきて世界がぐるぐるとなりはじめたんですの。
 ニックも「YUKI大丈夫かい?」と心配していてくれていたら、やっと料理がきたですわ。
 まず前菜として運ばれてきたものはおいしそうな生春巻き2本。
 ん?生春巻き?ん~?おいしそう・・・・なんかあったのですわ~。なんでしたの~。うーん。でもおいそうですの~。わたくし、
空腹で我慢できませんの~。あ~ん。かぷ。・・・・おいちー!
 そのあとは、よくはおぼえていませんの。
 どうやら、ホテルのおにいちゃんに聞くと、ニックと弟君が、レストランで食べ終わったぐらいに、
俵のように担いで持ってきてくれたらしいのですがそれはおろか、ニックの顔も思い出せないし、
ニックにもらったはずの住所もe-mailアドレスもないですの。なんで~!?
 
 翌朝、お世話になったホテルの従業員さんたちにお別れを言ってハノイを発ったのです。例の彼は、
うらめしそうにわたくしに手を振っていましたわ。そして延々1日かけて、日本までたどり着いたのですの。
 そういえば、旅の初め頃にはきちんとメールしていたのですが、後半はすっかり忘れておりましたわ、お師匠様のこと。
無事締め切りは乗り切ったのでしょうか。お師匠様に頼まれたものはきちんと手に入れましたわ。べとなむの写真と、
キョンキョンの午後の紅茶トランクと、その他もろもろ。でも、なんか忘れているような気がするですの・・・。
 そうこうしているうちに、飛行機は羽田に着いたですの。わたくしは荷物を手に到着ロビーに出たですの。すると、なんとそこには、
真っ黒に日焼けした・・・ではなくて、あまりの疲労に、顔色は土気色、髪はボーボー、ひげもボーボーのお師匠様が立っていたのでした。

 「お師匠様!ゆき!ゆき!帰って参りましたの~!あぁ~ん!」
 そうしてわたくしはお師匠様の腕の中に飛び込んだのでしたの!
 そして嵐のようなチュー・・・・ではなくて、・・・うっ、この鼻を突く臭いは!
 「お師匠様、もう何日・・・・」
 「・・・・みなまで言うな・・・。男には代償を払ってでも、やらねばならぬ時があるのだ・・・」
 そして駐車場へ歩き始めたお師匠様の背中には、男の哀愁が漂っていたのですわ。漂っていたのは、それだけじゃありませんけれども・・・・

 お・わ・り・

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 車は都心に向けて走っていくですの。
 開け放たれた窓は、車の中の空気を適度にかき乱して、夏らしい臭いをサンルーフからそとへと運んでいくですの。
 そのとき、ずっとだまっていたお師匠様が口を開いたですの。
 「生春巻き・・・・マスターしたか?」
 ・・・・・血の気がひいたですの。・・・・ポク、ポク、ポク・・チーン!
 「バ、バッチリですわ!任せてですわ!」
 「・・・そうか。よくやった。」
 わたくしは、こっそりとi-modeを取り出して、「ベトナム料理屋」と検索していたですの。ある夏の日の午後でしたの。

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